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「防火区画」とは?概要や区画の種類について解説

防火区画貫通部の設計・施工においては、建築基準法施行令が定めるところの「防火区画」に関する理解が不可欠です。防火区画とは、火事が発生した際に炎や煙が拡散しないように、一定の区間を燃えにくい壁や防火戸、防火シャッターなどで区切ること。もしくは、その区切られた部屋や空間(単位)を意味する言葉です。具体的には、「面積区画」「高層階区画(高層区画)」「竪穴区画」「異種用途区画」の4種類があります。

本記事では、建築基準法施行令を読むだけでは理解するのが難しい、防火区画や具体的措置について解説します。

防火区画の概要

火災時に炎や煙が拡散しないよう、燃えにくい壁や防火戸、防火シャッターなどで部屋や空間を一定の基準で区切ること、もしくはその区切る措置を防火区画と呼びます。この防火区画は、火災による被害を最小限に抑えるための仕組みとして建築基準法施行令で義務づけられています。

防火区画の防火戸や防火シャッターは、常時閉まっているものもあれば、普段は開いていて熱や煙に反応して自動的に閉まるものもあります。防火戸や防火シャッターを閉めて防火区画を完成させることを、「区画の形成」と呼びます。

建築基準法施行令における防火区画の位置づけ

防火区画の位置づけについては、建築基準法施行令112条に記載があります。建物の床面積によって区画の仕方は異なりますが、ここでは112条第1項第1号で言及されている建物について説明します。

法第二条第九号の三イ若しくはロのいずれかに該当する建築物(特定主要構造部を耐火構造とした建築物を含む。)又は第百三十六条の二第一号ロ若しくは第二号ロに掲げる基準に適合する建築物で、延べ面積(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)が千五百平方メートルを超えるものは、床面積の合計(スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のものを設けた部分の床面積の二分の一に相当する床面積を除く。以下この条において同じ。)千五百平方メートル以内ごとに一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。以下同じ。)で区画しなければならない。

出典:建築基準法施行令112条第1項第1号

上記をまとめると、以下のように解釈できます。

防火区画の対象となる建物区画床面積区画の仕方
下記のうち、延べ面積が1,500㎡を超えるもの
・主要構造部を耐火構造とした建築物
・建築基準法第2条第9号の3イかロに該当する建築物
・建築基準法施行令第136条の2第1号ロか第2号ロの基準に適合する建築物
床面積の合計1,500㎡以内ごとに区画1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床か壁、または特定防火設備を設置

上の表に記載した対象となる建物の区画床面積については、「自動のスプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備などを設けた部分の床面積の2分の1にあたる床面積を除く」とあります。ここで言及されている設備には、以下のようなものがあります。

スプリンクラー設備防火対象物の天井、または屋根下部分に配置されたスプリンクラーヘッドにより、火災感知から放水まで自動で行う設備
水噴霧消火設備水を微細な噴霧状にして放射するもので、主に発生する水蒸気による窒息作用により燃焼を阻止する設備
泡消火設備泡ヘッド、泡ノズルなどから空気泡を放射し、燃焼表面を泡で被膜する窒息作用と、泡に含まれる水分による冷却採用によって消火する設備

防火区画の種類

防火区画には大きく分けて4種類あり、それぞれ区画の方法が異なります。建築基準法に抵触してしまう施工忘れや間違った箇所への施工がないように、それぞれの区画についてきちんと理解しておきましょう。

面積区画

「面積区画」とは、一定以上の床面積を持つ建物に設けられる防火区画です。建築基準法施行令第112条の内容をまとめると、以下のようになります。

区画が必要になる建築物区画面積区画方法
壁・床の構造防火設備の種別
・主要構造部を耐火構造とした建築物
・準耐火建築物(任意の準耐火建築物)
床面積≦1500㎡1時間準耐火構造特定防火設備
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務づけられた以下の建築物
・準耐火建築物(1時間以上を除く)
・準耐火建築物(ロ-1)
床面積≦500㎡(防火上主要な間仕切壁も必要)
法21条・法27条・法61条・法67条により、準耐火構造を義務づけられた以下の建築物
・準耐火建築物(1時間以上)
・準耐火建築物(ロ-2)
床面積≦1000㎡

出典:建築基準法施行令第112条第1項、第4項、第5項

なお、ここに記されている「耐火構造」とは、火災が終了するまでの間、建物の主要構造部が延焼・倒壊しない構造のことです。「準耐火構造」とは、建物の主要構造部が延焼を抑制する構造を指します。

高層階区画(高層区画)

「高層階区画(高層区画)」は、11階以上の部分の安全性を高めるために適用される防火区画です。

一般的に、はしご車が届かない11階以上のビルなどでは消火活動が難しいため、通常の面積区画よりもさらに範囲を狭め、100㎡~500㎡の面積ごとに区画することになっています。

区画が必要になる建築物区画面積区画方法
壁・床の構造防火設備の種別
一般の建築物床面積≦100㎡耐火構造防火設備
内装仕上げ・下地とも準不燃材料床面積≦200㎡耐火構造特定防火設備
内装仕上げ・下地とも不燃材料床面積≦500㎡耐火構造特定防火設備
共同住宅の住戸床面積≦200㎡耐火構造防火設備または特定防火設備

出典:建築基準法施行令第112条第4項、第7項、第9項、第10項、第11項

竪穴区画

「竪穴区画」とは、階段や吹き抜け、エレベーターシャフトなどの竪穴に対して設けられる防火区画です。対象となるのは、「主要構造部が準耐火構造で、地階または3階以上に居室のある建物」です。

区画が必要になる建築物区画方法
壁・床の構造防火設備の種別
・主要構造部を準耐火構造(耐火構造)とした建築物
・令136の2-1-ロの基準適合建築物
・令136の2-2-ロの基準適合建築物
準耐火構造(または耐火構造)防火設備(遮煙性能)
3階を病院や診療所、児童福祉施設などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分間仕切壁防火設備
3階をホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分間仕切壁戸(ふすまや障子などは不可)

出典:建築基準法施行令第112条第11項、第12項、第13項、第14項、第15項

異種用途区画

「異種用途区画」の対象となるのは、同じ建築物内に店舗、住宅、倉庫など異なる用途の部分が複数混在するケースです。用途が異なる空間が混在していると、火災が発生した場合に生じるリスクがそれぞれ異なるため、異種用途区画が定められています。

異種用途区画では、面積区画や竪穴区画で必要なスパンドレル(外壁や天井材として使われる金属化粧板のこと)や50cmの袖壁(そでかべ)は不要とされています。

区画が必要になる建築物区画方法
壁・床の構造防火設備の種別
学校、劇場、映画館、マーケット、公衆浴場など
床面積が50㎡を超える車庫
1時間準耐火構造特定防火設備
2階建て以上で200㎡を超える百貨店、共同住宅、病院、倉庫など

出典:建築基準法施行令第112条第18項

設置が必要な設備(異種用途区画を除く)

以下では、防火区画に設置が必要な設備(ただし異種用途区画を除く)について具体的に見ていきましょう。

スパンドレル

スパンドレルは防火区画に接する外壁で、開口部からの炎の回り込みを防ぐための部位を指します。防火区画の外壁に使用され、延焼を防ぐ目的では高い効果を発揮します。ただし、高価であり設置にコストがかかる点はデメリットです。

袖壁(そでかべ)

袖壁にはいくつかの種類がありますが、ここで重要なのは、延焼防止のため建物の外部に張り出して設置する防火袖壁です。防火袖壁を設けることで、外壁・防火区画の開口部に設置し、20分以上の耐火・遮火性能がある網入りガラスなどの防火設備が不要になることもあります。

ひさし

防火区画としてのひさしは、建築基準法施行令に基づき不燃材料で製造することが求められています。加熱開始から20分間、加熱面以外の面に火の発生につながる亀裂や損傷などを生じさせないレベルの防火性能が必要です。

防火区画の貫通部分の処理

防火区画になる壁や床を配管設備が貫通する場合には、耐火性能を低下させない措置が求められます。具体的には、配管まわりのすき間を不燃材料で埋めたり、区間の貫通位置から両端1mを不燃材料で造ったりしなければなりません。

防火区画の要件緩和・免除規定について

建造物には、原則としてここまで説明してきた措置を講じなければなりません。しかしその一方で、防火区画には要件緩和・免除の規定も定められています。

面積区画の免除

面積区画の免除・緩和要件には以下のようなものがあります。

自動消火設備の設置
(第112条)
スプリンクラー設備などの自動消火設備の設置により、面積区画が2倍になります。
階段やエレベーター
(第112条第1項第2号、第4項第2号、第8項)
階段やエレベーターは、面積区画に含まれません。ただし面積区画の免除に関しては、これらの部分が1時間準耐火構造の床・壁と遮煙性能を有する特定防火設備で区画されている必要があり、高層区画に関しては、これらの部分が耐火構造の床・壁と遮煙性能を有する特定防火設備で区画されている必要があります。
用途による免除
(第112条第1項第1号、第2号、通達)
映画館や体育館、冷蔵品保管のための倉庫など、用途に応じてやむを得ない場合には面積区画が免除されます。また、階段室の部分などにおいて1時間準耐火構造の床や壁、特定防火設備で区画されている場合は高層階区画が免除となります。

竪穴区画の免除

竪穴区画は、避難階から直上・直下に通じる吹き抜け部分に限り、仕上げおよび下地を不燃材料にすることで免除になります。

まとめ

建築基準法施行令第112条で定められている「防火区画」について説明しました。ただし、耐火構造と準耐火構造は防火地域か準防火地域で変わるほか、必要な対策も異なります。防火区画の貫通部を検討する際は、本記事にある基準を参考に設計・施工をご検討ください。

ネグロス電工では、建築物内の防火区画貫通部において必要な貫通部防火措置製品などを提供しています。防火区画で必要な設備や貫通部防火措置製品について気になる方は、お気軽にお問い合わせください。

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