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「竪穴区画」とは?概要や免除および緩和の規定についても解説

「竪穴区画」とは建築基準法施行令第112条で規定されている防火区画の一つで、階段や吹き抜け、エレベーターシャフトといった竪穴部分における区画を指します。これらの竪穴部分は複数の階をつなぐ空間であり、竪穴区画が形成されていなければ延焼リスクが高くなることから非常に重要な役割を持ちます。

この記事では、竪穴区画が必要な3つのタイプの建物や、竪穴区画の要件が免除・緩和されるケースについて解説します。

竪穴区画の概要

竪穴区画とは、階段や吹き抜け、エレベーターシャフトなど、建築物の竪穴に設けられる区画です。建築基準法施行令第112条で定められた防火区画の一つですが、「竪穴区画」という言葉は通称であり、法令の中には出てきません。

竪穴区画が適用されるのは、「主要構造部が準耐火構造で、地階または3階以上に居室のある建物」です。

防火区画について

防火区画とは、火事が発生した際に煙や炎が拡散しないよう、燃えにくい壁や防火戸、防火シャッターで区切られた部屋や空間的なまとまりのことです。そして、それらの防火戸や防火シャッターを常時閉めておいたり、設備が火災発生時に煙や熱に反応して防火戸や防火シャッターを閉めたりすることを「区画の形成」といいます。

防火区画について詳しく知りたい方はこちらをクリック

竪穴区画が必要となる空間の定義

建築基準法施行令が竪穴区画について定めているのは、内外の階段室や吹き抜けなどが垂直方向に連続する空間であり、火災発生時に炎と煙が広がる経路となるからです。

具体的に、「竪穴」に該当する箇所は以下のとおりです。

屋内階段建物の複数の階をつなぐ内部の階段
屋外階段建物の複数の階をつなぐ外部の階段(屋外であっても防火区画は必要)
エレベーターシャフトエレベーター(昇降機)が走行する竪穴状の空間
吹き抜け複数の階にまたがる連続した空間
ダクトスペース吸気や排気、換気を行うダクトが通るスペースのこと

竪穴区画が必要な建築物

竪穴区画が必要になる建築物は「主要構造部が準耐火構造で、地階または3階以上に居室のある建物」と先述しましたが、具体的には以下の3パターンとなります。

対象となる建築物壁の構造床の構造開口部の構造
・主要構造部を準耐火構造(耐火構造)とした建築物
・令136の2-1-ロの基準適合建築物
・令136の2-2-ロの基準適合建築物
準耐火構造
(または耐火構造)
準耐火構造
(または耐火構造)
防火設備(遮煙性能)
3階を病院や診療所、児童福祉施設などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分間仕切壁防火設備
3階をホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分間仕切壁戸(ふすまや障子などは不可)

2つの竪穴区画が追加となった理由

上の表の2番目にあたる「3階を病院や診療所、児童福祉施設などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分」と3番目にあたる「3階をホテル・旅館・下宿・共同住宅・寄宿舎などの用途に供する建築物で階数が3階建てかつ面積が200㎡未満の竪穴部分」が竪穴区画に追加されました。

理由は、小規模な特殊建築物であっても、就寝用途のある場合や自力で避難することが難しい高齢者等が入所する施設の場合、階段部分を火災や煙から保護しなければ逃げ遅れる危険性が高まるからです。

出典:建築基準法施行令112条第12項および第13項

竪穴区画おけるスパンドレルの必要性

スパンドレルとは、開口部から火が回り込むことを防ぐ目的で、防火区画に接する壁や床に設けられる外壁のことです。防火区画が外壁と接する部分は準耐火構造(耐火構造)とし、以下のいずれかを設けなければなりません。

  • 幅90cm以上の外壁
  • 外壁から50cm以上突出したひさし、バルコニー
  • 外壁から50cm以上突出した袖壁

竪穴区画の免除および緩和について

竪穴区画は、条件や状況によって免除もしくは緩和されることがあります。具体的なケースは、以下のとおりです。

  • 準耐火建築物(ロ準耐)にする
  • 準延焼防止建築物にする
  • 地階または3階以上に居室を設けない
  • 開放廊下に接続する
  • 3階以下かつ200㎡以内の住戸とする
  • 便所とする
  • 「用途上やむを得ないもの」に該当する
  • 特定条件を備えた竪穴に該当する

準耐火建築物にする

建築基準法27条や61条によって「準耐火建築物以上」とする必要がある規模の場合、ロ準耐(建築基準法第2条第1項第9の3号(ロ)に定められた準耐火建築物)にすることで竪穴区画が免除されます。

準耐火建築物 耐火建築物以外の建築物で、イ又はロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロに規定する防火設備を有するものをいう。
イ 主要構造部を準耐火構造としたもの
ロ イに掲げる建築物以外の建築物であつて、イに掲げるものと同等の準耐火性能を有するものとして主要構造部の防火の措置その他の事項について政令で定める技術的基準に適合するもの

出典:建築基準法第2条第1項第9の3号

上記の条文で触れた「準耐火構造」とは、通常の火災による延焼を抑制するために必要な構造を指します。似たものに「耐火構造」がありますが、準耐火構造は耐火構造に比べて防火区画の要件がやや緩いのが特徴です。

耐火構造については詳しく知りたい方はこちらをクリック

準延焼防止建築物にする

外壁や開口部の防火性能を高めた準延焼防止建築物にすれば、ほとんどのケースで竪穴区画が免除されます。

地階または3階以上に居室を設けない

5階建てのビル(耐火建築物)の場合、3階・4階・5階に居室がなく、倉庫などになっていれば階段でつながっていても竪穴区画は免除されます。

開放廊下に接続する

階段が屋外廊下や屋外バルコニーにつながっている場合、竪穴区画が免除されます。共同住宅の階段が屋外廊下に接続されているケースが多いのはそのためです。

3階以下かつ200㎡以内の住戸とする

一戸建ての住宅、長屋、共同住宅で建物の階数が3以下、かつ床面積が200㎡以内の場合、竪穴区画は不要です。

便所とする

階段から便所のみに出入りする出入口の場合、竪穴区画は不要です。

「用途上やむを得ないもの」に該当する

上記のほか、吹き抜けなどの竪穴部分を区画することが用途上難しいケースでも条件が緩和されます。

ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむを得ないものについては、この限りでない。
一 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分
二 階段室の部分等(階段室の部分又は昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)をいう。第十四項において同じ。)で一時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されたもの

出典:建築基準法施行令第112条

建築基準法施行令第112条第1項第1号では、「劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する建築物の部分」とありますが、通達では具体的に以下のような例示があります。

昭和44年3月3日 住指発第26号倉庫および荷さばき施設
昭和46年9月8日 住指発第623号卸売市場の用に供する建築物の部分のうち、卸売場、仲買売場などの売場、買荷の保管または積み込みなどの荷捌場の用途に供する部分
昭和46年12月4日 住指発第905号ボーリング場、屋内プール、屋内スポーツ練習場などの主たる用途に供する部分

特定条件を備えた竪穴に該当する

1階から2階への吹き抜けなど避難階のすぐ上もしくは下の階「一層のみ」に通じる竪穴の場合、下地および仕上げ材に不燃材料を使用することで竪穴区画が免除されます。

避難階とは直接地上へ出られるフロアのことで、通常は1階がこれにあたりますが、複数存在するケースもあります。複数の避難階が存在する建物は、この条件に当てはまりません。

まとめ

建築基準法施行令112条で規定された防火区画の一つである「竪穴区画」について解説しました。複数の階をつなぐ吹き抜け部分に竪穴区画を形成することは、延焼を防ぐために不可欠な措置です。ただしすべてのケースで求められるわけではなく、要件が緩和・免除されることもあるため、正確に理解しておくことをおすすめします。

防火区画の貫通部処理で必要な防火措置製品について気になる方は、お気軽にネグロス電工までお問い合わせください。

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