防火区画の一種「令8区画」とは?押さえておきたい概要や構造、配管を通せる条件
「令8(れいはち)区画」は防火区画の一種で、消防法施行令第8条で定められた基準が適用された区画のことです。令8区画を設けることで、その区画されたスペースは独立している(それぞれ別の防火対象物である)と見なされます。
防火対象物に対して消防用設備を設置する際には、令8区画に関する正しい理解が必要です。この記事では、令8区画の概要や具体的な構造、令8区画に配管を通せる条件などについて解説します。
防火区画とは
「令8区画」を理解するためには、まず建築基準法施行令第112条が定めている防火区画について知る必要があります。
防火区画とは、火災発生時に建物の延焼や煙の拡散を防ぐ目的で一定区間を燃えにくい素材の壁や防火戸、防火シャッターなどで区切ること、もしくはその区切られた部屋や空間を指す言葉です。
なお、以下の記事では「防火区画には面積区画・高層階区画(高層区画)・竪穴区画・異種用途区画の4種類がある」と説明していますが、こちらは建築基準法施行令によって定められた防火区画です。これらと消防法施行令によって定められている「令8区画」は異なる基準であることを理解しておきましょう。
令8区画とは
「令8(れいはち)区画」とは、消防法施行令第8条で定められた区画のことです。具体的には、以下のように定義されています。
第八条 防火対象物が次に掲げる当該防火対象物の部分で区画されているときは、その区画された部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の防火対象物とみなす。
一 開口部のない耐火構造(建築基準法第二条第七号に規定する耐火構造をいう。以下同じ。)の床又は壁
二 床、壁その他の建築物の部分又は建築基準法第二条第九号の二ロに規定する防火設備(防火戸その他の総務省令で定めるものに限る。)のうち、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたもの(前号に掲げるものを除く。)
出典:消防法施行令第8条
つまり、「開口部のない耐火構造の床または壁で区画」されている場合は、別の防火対象物として見なされるということです。
例えば、下図のような7階建ての建物があるとします。

赤色の部分が「開口部のない耐火構造の床または壁で区画」されていれば、同じ建物であっても水色の部分、緑色の部分、オレンジ色の部分をそれぞれ別の構造物(防火対象物)と見なすことができ、消防用設備などの設置基準を個別に適用することが可能です。
3階から7階までの床面積の合計は7500㎡として、該当する消防用設備を設置 | |
開口部のない耐火構造の床・壁として、消防用設備を設置 | |
1階と2階をそれぞれ700㎡として、または延床面積1400㎡として該当する消防用設備を設置 | |
1階と2階をそれぞれ800㎡として、または延床面積1600㎡として該当する消防用設備を設置 |
消防法施行令第8条をより正確に理解するために、条文の中で使用されている用語「開口部」「開口部のない耐火構造」について説明します。
開口部
「開口部」とは、採光、換気、出入りなどのために壁や屋根、床などに設けられた設備のことです。貫通物(梁や配管)を通すための穴も開口部と見なされるため、「開口部のない耐火構造の床または壁で区画」する令8区画では配管を通すことも原則認められていません(ただし例外あり)。
開口部のない耐火構造
「開口部のない耐火構造」とは、条文に示されているとおり、建築基準法第2条第7号に規定された基準・仕様の構造を指します。
耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
出典:建築基準法第2条第7号
令8区画の構造
令8区画で求められる構造は、以下のように定められています。
・鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又はこれらと同等で堅牢かつ容易に変更できない耐火構造であること。
・建基令第107条第1号の通常の火災時の加熱に2時間以上耐える性能を有すること。
・令8区画の耐火構造の床又は壁の両端又は上端は、当該防火対象物の外壁面又は屋根面から0.5m以上突き出していること。ただし、令8区画を設けた部分の外壁又は屋根が当該令8区画を含む幅3.6m以上にわたり耐火構造であり、かつ、当該耐火構造の部分が次のいずれかを満たす場合にはこの限りではない。
└開口部が設けられていないこと。
└開口部を設ける場合には防火戸が設けられていて、かつ、その開口部相互が令8区画を介して90cm以上離れていること。
出典:令8区画及び共住区画の構造並びに当該区画を貫通する配管等の取扱いについて(通知)(総務省消防庁)

令8区画に配管を通せる条件
先述したように、原則として令8区画に配管などが貫通することは認められていません。しかし、必要不可欠な配管であり、かつ開口部のない耐火構造の床・壁による区画と同等と見なされる場合にはこの限りではないとされています。
令8区画に配管を通せる条件は、以下のとおりです。
- 用途は原則として給水管、排水管であること
- 配管は、口径200mm以下であること
- 貫通穴の直径は300mm以下(矩形の場合は直径300mmの円に相当する面積以下)であること
- 貫通穴の相互離隔距離は、貫通する穴の直径が大きいほうの直径以上(貫通穴の直径が200mm以下の場合は200mm)を確保すること
- 配管および貫通部は、火災時の熱に2時間以上耐えられる性能があること
- 貫通部にはモルタルなどの不燃材料を使い、完全に気密できるよう施工すること
- 熱伝導により配管表面に可燃物が接触した場合に発火する恐れがある場合は、その可燃物が 配管表面に接触しないように措置を講ずること
出典:消防予第53号
まとめ
この記事では、消防法施行令第8条で定められた区画「令8区画」について解説しました。防火対象物の部分が一定の基準に合わせて相互に耐火構造の床や壁で区画されている場合は、別の防火対象物として扱える規定である、と覚えておきましょう。
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